皆さまこんばんは! ダイナミックコード広報担当の新井です(=゚v゚)

7月になり、本格的な夏が迫ってまいりました! 気の早い蝉の音も聞きましたが、皆さんの地域ではいかがでしょうか?

暑さを忘れられるようなお楽しみとして、今週のブログではイベント情報の他に、以前公開された各バンドのショートストーリーも再掲載しちゃいます!

それでは、今週もDYNAMIC CHORDの情報をお届けいたします

まずはコチラの情報から!


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DYNAMIC CHORD イベント情報
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honeybee 10th memories夏の宝石”peridot summer”のページがオープン!!

DYNAMIC CHORDではマリンルックに身を包んだアーティスト達のちびキャラが公開されました。

ブログでもご紹介します!



桟橋や砂浜で思い思いに過ごす様子がとっても可愛いです!


”peridot summer”ではこのミニキャラがあしらわれたグッズも多数展開されます

また、会場に足を運んでいただいた方にはグッズ販売の他にも楽しい事があるかも…?!
詳細は今週金曜日にお知らせ予定となっております。

今年の夏はぜひ、honeybee 10th memories夏の宝石”peridot summer”にいらしてくださいね




▲イベントページはコチラからご確認ください


さらに!

アニメイトガールズフェスティバル2018へのDYNAMIC CHORDの出展が決定いたしました!!



今年はDYNAMIC CHORDDYNAMIC CHORD JAM&JOIN!!!!での出展となります。
詳細はまた後日お知らせしていきますので、お楽しみに


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◇◆DYNAMIC CHORD feat.apple-polisher V edition◆◇




『DYNAMIC CHORD feat.apple-polisher V edition』の発売から約1週間が経ちましたが、お楽しみいただけているでしょうか(=゚v゚)
気になっているけど迷い中という方は、店舗様ごとの特典も豊富にありますので、発売情報をじっくり見てみてくださいね

ただし、特典には限りがありますのでお早めに…!




そして、絶賛プレイ中…!という皆さま。もうクリアしたよ!という皆さま。
今回のブログでは、先週のブログから引き続き成海視点で贈るプロローグその2に加え、もっと隅々までapple-polisherのドキュメンタリーを楽しめる要素を再掲載いたします

まずはこちら!


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先週と今週のブログでは以前に旧ブログでもお届けしたapple-polisherのゲームのプロローグ部分にあたるシナリオを2回に分けて公開中です。

ゲーム内ではヒロイン視点で描かれているプロローグ。
こちらのシナリオでは、成海視点で描かれています!

先週の6月28日のブログではapple-polisherの出会いから結成までをお届けしました。

本日お届けするのはデビューをしてからゲームが始まる2016年2月までを振り返るシナリオです。
2回に分けていますが、1回ずつがとっても長いです…!

ゲーム本編のネタバレを含みますので、まずはゲームで楽しみたい!という方は、ぜひプレイ後に読んでみてくださいね。


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apple-polisherプロローグシナリオ
【Girl meets Boys~side NaL~】



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俺には、好きな女の子がいた。

母方の従姉妹で、俺と同い年の女の子。
真面目で、いつも笑顔で、曲がった事が大嫌い。
そして、いつだって他人のために全力。

いつから好きになったのかは分からない。
でも、気がついたら恋をしていた。

俺の……『初恋』。

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高校2年生の夏、俺は彼女――上遠野理緒ちゃんと再会した。

俺は生まれてからずっと、両親の仕事の関係で
アメリカと日本を行ったり来たりして育っていた。

だから彼女と過ごした時間は長くはない。
一番長くて、小学3年生の時からの1年間だ。

小学4年生の時にアメリカへ再度渡ってしまったから、
それ以来、ずっと会えていなかった俺の従姉妹。

彼女は駅で再会した時、俺を『天城成海』だと認識してくれなかった。

それもそのはず。
彼女は俺の事をずっと女の子だと思っていたのだ。

昔から、多分勘違いされてるんだろうな……とは思っていたけど、
まさかまだ間違っているなんて思っていなくて。

俺は、緊張していたのも忘れて変わらない彼女に安堵した。

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その時はゆっくり話せなかったので、
俺は改めて理緒ちゃんに会いに行き、今度はカフェで話をした。

彼女はその時、すでにapple-polisherを知っていて
ライブを見たと興奮した様子で話してくれた。

そして、彼女の家の隣に住んでいた幼なじみの香椎玲音と
その兄、香椎亜貴がバンドをしている事を。

彼女は、そのバンドを影で支えるマネージャーのような仕事をしていると教わった。

玲音がヴォーカルを務めるそのバンドは――[rêve parfait]

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【玲音】
「おい、成海。なに勝手にうちのマネージャーに触ってんだよ」

【成海】
「相変わらず偉そうだな、玲音は」

【玲音】
「お前はクソ生意気になったな」

【亜貴】
「玲音、言い過ぎ。ごめんね、成海ちゃん」

【成海】
「亜貴にぃ! 元気だった!?」

【亜貴】
「うん。そっちも、元気だったみたいだね」

【成海】
「うん、元気だった! わー亜貴にぃに会えるなんて嬉しいよ!」

【亜貴】
「僕も嬉しいよ!」

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亜貴にぃと会えたのは嬉しかったけど、
玲音は相変わらず生意気で、本当に腹が立った。

まあ……玲音があの時、俺に怒った理由も
昔、俺をいじめていた理由も本当は知っていたけど。

知っていたからこそ、俺も好きになれなかった。
だから、玲音とはいつもいがみ合ってしまう。

でも、そんな事は気にならないくらい
俺の生活に彼女がいるのが嬉しかった。

だけど……。

彼女と再会し、何度か顔を合わせ話しているうちに、俺は気づいてしまった。

俺の初恋は叶う事はない、と――。

俺が彼女を想うように、そこには彼女を想う相手がいて、
そして彼女もまた、そいつを同じだけ想っていた。

直接聞いたわけじゃない。
けど、俺は気付いちゃったんだ。

それでも……想い続ければ、きっと想いは返ってくると信じて、俺は彼女を想い続けた。

父さんと母さんは、愛すれば愛した分だけ
大事にすれば大事にした分だけ、
俺にも同じものを返してくれた。

だから俺は、それが自分に返ってくると信じて疑わなかった。

だけど……いくら想っても、いくら大事にしても、
彼女が俺と同じ想いを返してくれる事はなかった。

消化出来ない想いはいつしか胸の底に澱となり、
俺を『初恋』という鎖で縛り続けた。

だけど、このままじゃいけない。

そう思っていた矢先、新曲を作る事になった。

作曲をお願いした俺に、夕星は一つ条件をつけた。

俺が作詞をする事。

これが、新しい一歩を踏み出すきっかけとなった。

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スピーカーから流れてくるピアノの音が、
俺の耳から心臓、そして指の先へと伝わる。

夕星が作り上げた新曲は、涙の音に聞こえた。

それを一音も聴き逃がさないようにと、
俺は夕星の作った音を胸に刻んでいく。

そうして一通り聴き終わった後、俺は夕星を見た。

【成海】
「ねぇ、夕星……もしかして、悲しい恋をした事がある?」

【夕星】
「……」

いつもなら深い話をすると、さらりとかわしてしまう夕星が、
珍しく驚いた顔をしている。

【成海】
「……なんとなく、そんな気がしたんだ」

聞いちゃいけない事だったのかもしれないと思いながら、
それでも俺は、思ったままの言葉を口にする。

【成海】
「この曲はね、夕星の事を俺にたくさん教えてくれたよ。
悲しい恋をしたことがある事、その人の幸せを願っている事。
それから……」

【成海】
「夕星が優しいって事」

【夕星】
「……」

【成海】
「でも、夕星が優しいっていうのは、とっくに知ってたけどね」

微笑み、俺はもう一度夕星が作ったばかりの曲のデモを流した。

【夕星】
「ねぇ、成海。僕、成海のこと誤解してたかもしれない」

【成海】
「え……?」

振り返ると、夕星はもういつもの笑みを浮かべていた。

【夕星】
「成海はどんな歌詞つけてくれるんだろぉ~。
ちょお楽しみ♪」

言いながら、夕星は近くにあったクッションを抱え、ベッドにごろんと寝転がった。

【成海】
「もう、夕星! プレッシャーかけないでよぉ~」

苦笑しながら夕星の顔を覗き込んだ。

すると夕星は、まじまじと俺の顔を見つめた後、
今まで見た事もないくらい優しく笑った。

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それから俺は、俺なりに夕星の曲を解釈しながら言葉を乗せていった。

でも、今までの作詞のように簡単にはいかなくて……
俺は何度も、何度も、言葉を探すために手を止めた。

せっかくいい言葉を見つけても、
なんだかこの音にしっくり合う言葉はなくて……。

言葉の海に溺れかけた俺の元に、亜貴にぃから電話が来た。

亜貴にぃはレヴァフェで作詞を担当していて、
その歌詞はレヴァフェの独特の世界観を作り上げていた。

そんな亜貴にぃに、俺は歌詞が書けない事を相談した。

【亜貴】
『成海ちゃんも作詞をした事あるよね?』

受話器の向こうで、亜貴にぃが不思議そうな声で尋ねる。

【成海】
「うーん、そうなんだけど……今回の曲は
どんな歌詞をつけてもしっくりこないんだ」

【成海】
「あれでもない、これでもないって迷っちゃって……」

【亜貴】
『……成海ちゃんにとってその曲は、よっぽど大事な曲なんだね』

【成海】
「……うん」

【亜貴】
『じゃあ、きっと曲が素敵すぎて、成海ちゃんは焦っちゃったんだよ』

焦ってる……亜貴にぃの言葉で、俺は気づいた。

夕星の作り上げた曲はあまりに美しく、
悲しいのにどこか優しくて、あたたかくて……。

それでいて全てを許した上で、相手の幸せを願っているような気がした。

だから俺はその曲に見合うだけの歌詞を……と、
知らず知らずのうちに焦っていたんだ。

【亜貴】
『焦ると余計言葉は逃げちゃうからね。
焦らず、成海ちゃんのペースで言葉を選べばいいんだよ』

【成海】
「……うん、そうだね」

【成海】
「ありがとう、亜貴にぃ。あっ……玲音にも……一応、よろしく言っておいて」

【亜貴】
『うん、分かった。でも成海ちゃん……くれぐれも無茶しちゃだめだよ?』

【成海】
「それは俺のセリフ。亜貴にぃもだよ」

【亜貴】
『あはは……』

それから亜貴にぃといくつか言葉を交わし、電話を切った。

その後、俺はもう一度落ち着いてメロディを辿っていく。

すると、今はまだ名もないこの音楽が、過去の恋に縛られている俺の背中を押してくれているみたいで、
切ない気持ちが溢れてきた。

ぱたり、とノートに落ちた雫が『恋』という字を滲ませる。

【成海】
「……うん」

この気持ちを歌詞にしよう。
そう思って、俺はゆっくりとペンを走らせた。

痛みを知らずに生きることが出来れば、どんなに幸せか分からない。
だけど、痛みを知らずに生きていては、誰かの痛みに気づくことなんて出来ない。

俺の痛みは、初恋の彼女だ。

悲しい恋だった。

出会いと別れを繰り返していく人生の中で、一緒にいたいと願っても道を違えてしまう人がいて、
俺が一緒にいたいと唯一願った人がそういう運命の人だった。

好きにならなければ、愛さなければと思ったことは一度もない。
それでも、俺の胸に痛みを残した恋だった。

【成海】
「……サヨナラは……君の幸せに、捧ぐ……」

メロディを聴きながら、言葉を探しては見つけ、それを拾ってはペン先に集めていく。
ただひたすら時間を忘れて書き尽くした歌詞には、今の俺の気持ちが詰まっていた。

【成海】
「でも……」

出来上がった歌詞には、俺の本当の気持ちが入っていなかった。

幸せを願う気持ちはある。その気持ちに嘘偽りはない。
けど、その一方でどうしても消せない想いがある。

【成海】
「うーん……」

ほとんど出来上がったのに、何かが足りない。

【成海】
「何が……足りないんだろう」

完全に手が止まってしまった。
俺はペンを離し、フラフラと部屋を歩いてそのままベッドに倒れこんだ。

枕に顔を埋めながら、もう何度となく聴いたメロディに身を預ける。

【成海】
「…………」

恋をして知った事は、たくさんある。

俺が想像していた恋のイメージとは違って、
恋をして得たのは、幸せな気持ちだけじゃなかった。

醜い気持ちも、悲しい気持ちも、切ない気持ちも……
今まで俺が知らなかった、たくさんの気持ちを教えてくれた。

今でもまだ、思い出す度に胸が痛くなる。
忘れたかった。でも、忘れられなかった。

【成海】
「……うん、決めた」

俺は起き上がり、もう一度机の前に座った。

そして、願いを込めた歌詞の間に俺の胸に残ってしまった、
たったひとつの気持ちをしのばせる事にした。

――I can’t touch you,
but I’m making love to you in my mind.――

人はそれを女々しいとか、未練がましいと笑うかもしれない。

でも、それでいい気がした。

好きな人の幸せを願うだけではいられない。
愛したのだから、愛して欲しいと願うのが本音だ。

でも、たとえそれが叶わなくても人を愛せた記憶を……忘れたくない。
彼女を愛した記憶を、想いを。

もちろん、いつかはちゃんとこの気持ちを消化させるから、
今だけは本音を言わせて。

【成海】
「でも気づかれたくないから、隠しておくよ。よし……出来た」

【成海】
「タイトルは……」

出来上がったばかりの歌詞の上に、
サラサラと英字のタイトルを書き込む。

『this song is dedicated to you.』

ピリオドを入れたのは、気持ちを揺るがせないため。
これは……俺が愛した人に捧げる歌だ。

【成海】
「さようなら。俺は君を……愛していました」

そして俺は出来上がったばかりの歌詞を
夕星の作った優しい曲に乗せて、歌にした。

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グリララさんの曲を聴きながら、俺はまた過去を思い出し、ため息をついた。

いつか新しい恋をしてみたいとは思う。
でも、それはまだまだ遠い未来の話。

今はapple-polisherとしての活動で頭がいっぱいだ。
何よりバンド活動が楽しくて仕方ない。

だから、願う。
いつかこんな大きなステージで、有紀と、忍と、夕星とライブをしたいって。

さっき2人に伝えた事がまた胸を過ぎる。
でも、それは願いじゃない。決意だ。

次は君達が客席で俺達を見てる番だよ。

俺はその気持ちを胸にステージを睨むように見つめた。

するとMCで、翼さんは1人の歌姫を呼んだ。
今日のゲストだ。

彼女は中央に立つと、グリララと忍の演奏をバックに
強く、伸びのある歌を歌い出した。

その歌はどこまでも澄んでいて美しい歌声だな、と思った。
でも……。

(あれ? この歌声……どこかで聴いた事がある)

そう思って自分の記憶を辿っていると
遠い昔に出会った、1人の少女を思い出した――。

その子は、俺がアメリカにいる時に出会った女の子だった。

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父さんと同じ職場の人で、
母さんとも友達だという女性が連れてきたのは、
恥ずかしがり屋で人見知りな女の子だった。

俺と母さんが玄関から出てきて挨拶をする間も、
母親の背中に隠れて、こっちが心配になるくらい
緊張して泣きそうになっていた。

俺はその子に少しでも笑ってほしくて、笑顔で「こんにちは」と声をかけた。

すると彼女は何度も瞬きを繰り返した後、
柔らかそうなほっぺたを赤く染めながら名前を教えてくれた。

女の子の名前は、柊美羽。

俺は『美羽ちゃん』と呼んで、家に来た時は
出来るだけ一緒に遊ぶようになった。

美羽ちゃんは最初、その人見知りのせいで
自分から話しかけてくれる事はなかった。

だから俺が根気よく、いろんな話をした。
スクールでの事、母親のおやつの事、歌の事……
とにかくたくさんの話をした。

彼女は元々、話好きだったみたいでそうしていくうちに、
徐々に打ち解けてくれるようになった。

でも、美羽ちゃんが変わる決定的なことがあった。

母さんがある日、聖歌隊で歌っている俺を美羽ちゃんにも見せに来たんだ。

彼女はそれがきっかけで俺と同じ聖歌隊へ入り、
自分からも歌うようになっていった。

そして俺達は、一緒に歌を歌う事が増えた。

歌に興味を持ってくれた事が嬉しかった俺は、
美羽ちゃんに知っている限りのいろんな歌を教えた。

彼女はそれをすぐに吸収してくれるから、
俺はもっと、もっと楽しくなっていった。

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【美羽】
「ど、どうかな……?」

それは、ある日の事だった。
いつものように俺の部屋で歌を教えていた時、彼女が「歌を聴いて欲しい」と言ってきたのだ。

そして彼女は、初めて1人で歌い上げた。
……俺が教えたアメリカの有名な女性歌手の歌を。

歌い終えた彼女は恐る恐る、俺の目を見る。

その目を見ていたら、昔、俺が同じように理緒ちゃんに歌を聴かせた時の事を思い出した。

きっと俺もあの時は、こんな目をしていたんだろうな、と思う。

だから俺は、心のままに美羽ちゃんへ感想を伝えた。
昔、従姉妹が俺にそうしてくれたように。

【成海】
「すっごく上手だよ! かっこよかった!
おれ、美羽ちゃんの歌が好きだな」

【美羽】
「っ!」

これは俺の本音。
美羽ちゃんの歌は、もっと聴いていたいと思わせる力がある。
まだ小さかった俺の心を震わせるほど。

美羽ちゃんは俺の言葉が嬉しかったみたいで、
ほっぺたを赤くしながらはにかんだ。

俺があの時、同じような顔で笑ったように。

そして美羽ちゃんが、今度は2人で歌いたいと言うので
俺はどんな曲にしようか、と父さんのレコードをざっと探していた。

その時、美羽ちゃんがぽつりとこぼした。

【美羽】
「成海君は、歌うのが好きだよね」

【成海】
「うん、大好きだよ!」

【美羽】
「どうして、歌う事が好きなの?」

予期していなかった質問に、ぽかんとなる。
でも一瞬の間に、大事な記憶が蘇った。

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【成海】
「どうかな……?」

歌い終わると、彼女に感想を聞いた。

すると彼女は満面の笑みを浮かべて、
『すごく良かったよ!』と言ってくれた。

それから、『成海ちゃんの歌、もっと聴きたい!』と興奮気味にねだられた。

そして最後の一言が……多分、俺が恋した瞬間。

『私、成海ちゃんの歌が大好き!』

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あの時の記憶が、俺の胸と頬を熱くする。
その間も俺の答えを待つ美羽ちゃんに、
俺は少し恥ずかしい気持ちになりながら答えた。

【成海】
「好きな子がね、おれの歌を好きだって言ってくれたんだ。
だから、歌うのが好きなんだよ」

【成海】
「それに……歌っている時は、
おれがおれでいられるような気がするから!」

美羽ちゃんは何度も瞬きを繰り返した後、小さくはにかんで
『私も成海君の歌が好きだよ』と言ってくれた。

歌は笑顔を運ぶ。
太陽のような笑顔を俺に運んできてくれる。

――俺は歌う事が好き。

俺の歌を聴いてくれた人の笑顔が大好きだ。

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【成海】
「……美羽ちゃんだ」

【有紀】
「美羽?」

過去の記憶と今の光景が重なっていく。
この、魂ごと震わせてくれる歌声は間違いなく記憶の中の女の子。

【有紀】
「成海?」

有紀に何か声をかけられた気もするけど、声が出ない。
俺はステージに立つ美羽ちゃんの歌を、食い入るように聴き続けた。

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今回は、apple-polisherデビューをしてからゲームが始まる2016年2月まで成海視点で振り返りました。




続いてはシーンリストについてお届けします!


『DYNAMIC CHORD feat.apple-polisher V edition』の本編・共通ルートのscene20はご覧いただいたでしょうか?

実はこのscene20は、とても複雑な条件の下でしか発生しない仕組みになっています。
そこで、今回はscene20を見る方法をこっそりお伝えしちゃいます!



*scene20を見るための条件*

①scene20を見るためには、成海と忍ルートをクリアした上で、夕星か有紀を狙って選択肢を選んでいきます。

②その際、scene11『葉桜の下で花びらに願う』、scene12『葛藤とジレンマ』、scene13『奪われたファーストキス』、scene14『踏み込んでほしくない領域』のイベントを発生させないようにしなければいけません。

③夕星か有紀の好感度をあげつつ、該当イベントが起きる前に
選択肢をひとつ外している状態でしか発生しない、極めてレアなイベントになっています。

④このまま進めていくと共通バッドエンディング2が開きます。



全員をクリアした皆さまは、ぜひ試してみてくださいね


さてさて、どんどん行きます!

続いては以前『SweetPrincess vol.18(株式会社ヘッドルーム)』にて掲載されたapple-polisherのショートストーリーを再掲載!

このお話は、『vocalCDシリーズvol.4 apple-polisher』のドラマパートで夕星がメンバーとして加入し、4人体制でのapple-polisherが始動した頃のお話になっています。

▼apple-polisher 【Ascending scale



apple-polisher SS 【Ascending scale

高層ビルの立ち並ぶダウンタウンの一角、交通量の多いメインストリートから少し入った所にある、
最近では珍しい石造りの建造物は、そこだけ他と違う空気を醸し出していた。
三角に尖った屋根、大きな窓には色とりどりのステンドグラス。
そこから差し込む陽射しは温かく静かに室内に降り注ぎ、光の梯子を作っている。
壇上に並ぶ合唱団の子供達が綺麗なソプラノを奏でるのを聴きながら、
俺は等間隔に並べられた木製の長椅子に腰掛け、肌に馴染んだ英語の歌詞に耳を傾けていた。
数年前までは、自分もあの子供達のように歌っていたんだなと思うと、ちょっと不思議な感覚になる。
開放された教会は歌声が響く以外はとても静かで、時折カモメの鳴き声がするだけだった。
小さい頃に何度か日本を離れた時も、成長した今でも、自分の中でなかなか処理出来ない感情が渦巻いてどうしようもなくなると、俺はここに来ていた。
外の喧噪から遮断された空間が心地よくて、何も考えずにいれば自然と心が落ち着いていく。
「……有紀のバーカ」
溜め息とともに吐き出した言葉は、少し掠れていて情けなくなる。
有紀とケンカした。
週末に控えた対バンライブを前に、俺が体調を崩してしまったことがきっかけだった。
この辺りでは有名なライブハウスで、お客さんもたくさん入る。
しかもapple-polisherが4人体制になってから初めてのライブ。
気合が入らない訳がない。
もっともっと歌いたい。
1分1秒が惜しくて、家に帰ってからも何度も繰り返し練習した。
少し体調が悪い自覚はあったけど、歌えないほどじゃないと思った。
でも、有紀と忍は誤摩化せなかった。
『我儘と責任感は違うんだよ、成海。客の前に出たら言い訳なんてできないんだ』
有紀にそう言われて、練習のために集まっていたスタジオを飛び出して来てしまったのは、つい30分程前のことだった。
俺が悪い。
そんなこと分かってる。
ヴォーカルなのに体調管理ができなかった自分の責任だ。
でも俺は、無茶をしたかった。だって俺が出来ることは、歌うことだけなんだから。
「それで歌えなくなったら意味ないって、分かってるんだけどな」
逸る気持ちは空回りして、結局みんなに迷惑をかけた。
しかも飛び出して来ちゃうなんて……。
その時、後ろから足音が聞こえて来た。まっすぐに進んで来るその音はやがて止まり、
視界の端にこの場所に似つかわしくない派手なスニーカーが映ったかと思うと、音の主は通路を挟んだ反対側の椅子に腰掛けた。
「Hey,What's up?」
「……So bad」
「あはは、だろうねぇ~」
夕星は俺の方を見るでもなく言うと、壇上の子供達を見て「あ、あの子可愛い~。数年後にはいい女になると思わない? 今から唾付けとこっかな~♥」などと冗談とも本気ともつかない発言をした。
「なんでここが分かったの」
「ん~? べっつにぃ~。どっかのヴォーカルは飛び出してくしギターはウザイくらい落ち込んでるし、音合わせどころじゃなくなってすっごい暇になったから散歩してただけ~」
「……ごめん」
自分勝手な行動をしている自覚がある俺は、項垂れるしかなかった。
「あんたたちでもケンカとかするんだね。僕ちょっと驚いちゃった」
普段よりも落ち着いた声音に隣を見る。
無意識なのか、夕星の指先は子供達の歌声に合わせて軽くリズムを刻んでいた。
「そりゃあ……するよ。有紀も忍も頑固だからね、特に音楽のことになると!
俺も負けず嫌いだから、日本にいた頃からよくケンカした」
「ふ~ん。……もっと仲良しごっこしてるのかと思ってた」
「え? なに?」
「なんでもな~い♥ つか、あいつらって成海にくっついてこっち来たんでしょ? 重くねーの」
三日月型に細められた夕星の眼は、探るように俺を見詰める。
見透かしてくるようなその視線に一瞬怯みそうになったけど、初めて会った時に、この眼からは逃げないって決めたことを思い出してぎゅっと拳を握った。
「2人がアメリカに行くって言ってくれたとき、俺、めちゃくちゃ嬉しかった。2人以外の音で歌う俺を、もう想像出来なかったから。だから、色んなものを置いて付いて来てくれた2人を後悔させたくない。それに、夕星にも」
「僕?」
「apple-polisherに入ってよかったー! って、言わせてみせる」
「……へぇ~。ま、勝手に頑張りなよ。僕は後ろから見ててあげるからさ」
「いいよ。それで」
そうだ。俺はもう1人で歌ってる訳じゃない。
ライブだって、俺1人の力じゃ出来ないのに。
それに気付いたら、肩の力がスッと抜けた気がした。
「戻ろう、夕星。有紀に謝るよ。それで、今日は帰って休む。ライブには絶対間に合わせるから」
「その前に有紀が謝ってくるにサイダー1本♥」

夕星と一緒に教会の外に出ると、見覚えのある車のボンネットに寄りかかって煙草を吸う有紀と、忍がいた。
「ちょっと~、それ僕の車なんですけどぉ~」
「キー放り投げてった奴が何言ってんだよ。1人でさっさと行きやがって」
「成海、顔が赤いぞ。熱が上がったんじゃないか」
忍が心配そうに駆け寄ってくる。
バツが悪そうに眉を寄せる有紀と目が合うと、隣の夕星にしか聞こえない声で呟いた。
「残念だね、夕星。賭けは俺の勝ちだよ」
有紀が口を開く前に、俺の大声の謝罪と、一拍置いて夕星の笑い声が青い空に響いたのだった。



apple-polisherがバンドとして形になっていく過程を描いたお話でした。

せっかくなので、apple-polisher以外の[rêve parfait]Liar-SKYOHSOのショートストーリーも再掲載いたします!
それぞれヴォーカル視点で描かれた、各ドキュメンタリーにも繋がるショートストーリーです。

▼[rêve parfait] 【Fragments of a dream
ライブのステージに向かう直前の様子を玲音視点で描いています。



[rêve parfait] SS 【Fragments of a dream

楽屋の雰囲気はいつもと変わらなかった。
亜貴はいつもように緊張していたし、久遠はそんな亜貴を宥め、つむぎは相変わらず退屈そうにあくびをしていた。
6畳にも満たないこの部屋が今のオレ達のあじとみたいなもので、そこでライブの出番までの時間を過ごす。
テーブルの上にたくさんあった差し入れのお菓子からは、ご丁寧にイチゴ味のお菓子だけがなくなっているのは、きっとつむぎが食べたからだろう。
そんなところまでいつもと変わらなくて、オレは少し笑った。
「何笑ってんだよ?」
「いや、何となくな」
そんな会話をつむぎとしていると、ドアが2、3度ノックされ続いてドアが開く。ドアの向こうから入って来たのは190㎝に近い長身のマネージャーである八雲だった。
「いや~セキュリティーの人と勘違いされて持ち場の説明されてたら、遅れたよ~」
声をかけられ一方的に説明が始まり、一通り説明を聞いた後で、相手が勘違いしている事に気付いたらしい。八雲はその見た目のせいかこういう事が今までに何度かある。
その度にちゃんと説明を聞いてあげているから、本当お人好しだ。
この話は亜貴には効果覿面だったみたいで、さっきまで緊張していたのが嘘のようにお腹を抱えて笑い出した。
それにつむぎが続く。
2人は一度笑い出すとしばらく笑っていて、八雲の出現によって楽屋は一瞬で笑いに包まれた。
その様子を見てほっとしたのは八雲だけじゃない。オレ達は心の中で八雲に感謝した。
亜貴が落ち着くころを見計らって八雲は「そろそろ出番だよ」と静かに微笑む。
その言葉で全員に緊張と気合が入る。

バックステージに向かうとそこには演奏中の音を別の面で支えるスタッフが待っていて、オレ達を見ると思い思いに声をかけてくれる。
メンバーそれぞれに付いている楽器を担当するスタッフと最終確認をしてから、久遠の合図でその場にいる全員が円陣を組む。
アシスタントだろうが、監督だろうが関係なく1つの輪になる。
並んだ顔を見渡すと全員、楽しくて仕方ないという自信に満ち溢れた表情をしていてオレは鳥肌が立つのを感じていた。
オレ達、1人1人の力は大したことない。
周りの人間が思っているほど、オレ達は大したことないんだ。
でも、1人1人は大したことがなくても、4人揃えばそれは1つの大きな力になるし、そこにスタッフの力と、ファンの歓声が加われば一瞬で世界は一変し、天国にも地獄にも似たような空間と音が広がる。
それはまるで“夢”のような空間であり、時間だ。
オレ達の音を牽引し支える亜貴のドラムの音に、リズムを支配するつむぎのベースが続いて、大きなメロディを生み出す久遠のギターが加わり、オレの歌声がそれらの音に重なった瞬間、必ず奇跡は起こるから――。
その奇跡のような瞬間は、魂を苦しくなるほどに震わせ、心を満たしてしまう事をオレはもう知ってしまった。
だから、ステージを下りられない。
麻薬のような快楽と衝動と、銃声のような歓声と振動と、太陽のように照りつけてオレを焦がそうとする照明の下がオレの生きる場所。
そこは孤独だ。
でも、どんなに孤独でも、音の洪水に溺れもがき苦しもうと、それを天国にも地獄にも代えるのはオレの歌声ひとつ。
中々言葉を発しないオレの顔を、隣にいる亜貴が覗き込む。
さっきまで緊張していたのに今では、凛とした表情をしている。
「よーーーし!! 最高のステージにすっぞ!! いいな、お前ら!!!」
オレの言葉に全員が大きな声で答える。
「いくぞー! レーヴパッフェ、レディ、ゴー!!」
オレの言葉が引き金になり、バックステージいっぱいに客席にまで聞こえそうな声が響き渡った。
外では会場BGMが流れ出し、オレ達の出番を待つ手拍子が聞こえる。
スタッフはそれぞれの持ち場に向かい、後は出番の合図を待つだけだ。
久遠、つむぎ、亜貴とそれぞれ拳をぶつけ合い、それぞれの立ち位置に着く。
会場BGMの盛り上がりが最高潮に達した瞬間、スタッフの合図でオレ達は暗闇の中、ステージに向かって歩き出した。
最初にステージに向かって歩き出すのはリーダーのRook。その後にKnightが続き、すぐ前をBishopが歩く。
ライブ中には背中を見せているオレが、今だけはメンバーの背中を見ている。
今日の夢を完璧に終わらせてやると思いながら、一歩、一歩夢に近づいていく。
ここから始まる。
魂を震わせるステージが――。



▼Liar-S 【夏のはじめの隠しごと
夏フェスを目前に控えたメンバーの様子を朔良視点で描いています。



Liar-S SS 【夏のはじめの隠しごと

じっとりとした梅雨の期間を終えて、季節は夏を迎えた。
講義を終えた俺は、ノートやら教科書やらを鞄に詰め込んだ。
春期の講義も残りわずか数回。試験が終われば、いよいよ夏休み。
今年の夏も例年通り、フェスの予定がガンガン詰め込まれている。今日もこれから事務所で夏フェスの打ち合わせだ。またあの熱狂の中で歌えるのだと思うと、考えただけでぞくぞくと胸が震えた。
去年の夏フェス――『RISE'n SHINE』を発表した時の会場の熱狂具合を思い出して、俺は思わず笑みを漏らす。
「あれ、檜山大先生が笑ってら。めずらしー」
廊下を歩いていると、ばったりと芹に遭遇した。開口一番、減らず口を叩いてくるこいつに、せっかく楽しんでいた気分を邪魔された気になり、眉根を寄せる。するとやっぱりこいつは「怒るなって」とへらへら笑った。
そのまま一緒に事務所へ向かう事になり、2人横並びで構内を歩き始める。
「何か楽しいことでもあったのか?」
「別に」
「だよな~。今まで講義サボりまくって単位がまるで足りてない朔良さんは、次の試験ひとつも落とせない崖っぷち状態のはずだもんな~。楽しい事なんてあるわけないよな」
思い切り、芹の足を蹴り飛ばす。芹は「痛ぇ!」と一声絶叫した。
「冗談はさておき、一体何を考えてたんだ?」
こいつ、相変わらずしぶといな。内心そう毒づきながら、俺は顔を上げた。
「夏フェスが近いなって」
「ああ、それか。そりゃフェスのことを考えれば、楽しみでニヤつきたくもなるな」
「早く歌いてー」
「俺も。早くやりてー」
「芹が言うと違う意味に聞こえるな」
「どういう意味だよ」
そんなくだらない事を言い合いながら、外へ。空は夕暮れと宵闇が入り混じったような色をしていた。
「懐かしいな」
空を仰ぎながらふいに呟くと、「何が?」と芹に尋ねられた。
「高校の頃、空がこんな色をしてる時間に、練習スタジオまで走っていったよなって」
「あ~、そうだな。お前だけ高校違うから、毎回俺がわざわざ自転車でお前のこと迎えに行ってさ。2ケツして、何度か警察に怒られたよな」
「そうだっけか」
「そうだよ! 都合の悪い事だけ忘れるなっての」
やっぱり芹はへらりと笑う。ブサイクな笑顔。
だけどそれも、去年よりはずっとマシになった。ちゃんと、楽しそうに笑うようになった。メンバー全員でLiar-Sの再起を誓った、あの日から……。
昔に戻ったような様子に安堵するが、それでもきっと、こいつは自分の内に秘めてるすべてを明かしてはいないのだろう。俺にも、メンバーにも。
こいつがどこまで正直に明かしていて、どこまで嘘をはらんでるのか、俺は知らない。けれどこいつが口にしようとしない事を、俺達が無理に探る必要はないと思っている。生きている人間なのだから、隠しごとの1つや2つ、あって当然だ。
――嘘つきばかりの「Liar-S」。これほど人間臭いバンド名もそうそうないだろう、と俺は思う。人は、嘘をつかずにはいられない生き物なのだから。それを名付けたのが芹というのがまた、皮肉めいているが。
そんな事を考えながら芹の横顔をまじまじと眺めていると、訝しげな視線を返された。
「何だよ? そんな熱視線を送られても、俺そっちの趣味ないんですけど。よそ当たっていただけます?」
「うぜえ」
思い切りスネを強打してやると、こいつは「痛い」と吠えたあと、また楽しそうに笑った。

そうして事務所に到着すると、加賀と、先に到着していた宗と千哉が俺達を出迎えた。
「遅いんだけど。どこかで道草でも食ってたわけ?」
「まあまあちーちゃん。まだ約束してた時間から10分しか経ってないんだから、そんなに怒らないであげて」
「10分でも遅刻は遅刻だろ」
相変わらずの容赦ない辛辣ぶりを見せる千哉と、優しくなだめる宗。
「あはは、遅くなってごめんな~。加賀さんもすみません」
「いいから、早く打ち合わせを始める準備をしなさい」
笑って謝る芹に、呆れたように大きくため息をつく加賀。
(……今日も賑やかだ)
なんだかんだ言いつつも楽しげなこいつらの顔を見ていると、また笑みが零れた。
俺を支えてくれる、俺の仲間たち。また今年もこいつらと熱い夏を過ごせるのだと思うと、やっぱり喜びで胸が震える。
こいつら全員の笑顔を守るために俺が出来ることは、「歌うこと」、ただそれだけ。
自分のために、こいつらのために、俺は歌う。
今年の夏も、夏が終わった後も、ずっと……。
「さくらちゃん、どうしたの?」
俺の顔を覗き込んでくる宗。他の3人も不思議そうに俺を見ている。
その場にいる全員の顔を見渡して――
「腹減った」
「我慢しろよ!!」
思い切り千哉に叱られた。
加賀に促されるまま、俺達は会議室の椅子に腰掛ける。
――俺もまた、「Liar」。胸の内に隠した決意は、伝えたいと思った時に伝えればいい。
そんな事を考えながら、俺は、期待に胸が膨らむ夏の打ち合わせに耳を傾けるのだった。



▼KYOHSO 【Time flew.
10周年記念ツアーの合間のひと時の様子を依都視点で描いています。



KYOHSO SS 【Time flew.

10周年記念ツアーも終盤に差し掛かり、ライブを重ねるごとにメンバー、スタッフともより一層仲が深まったと感じている。今は地方公演のラストが終わり、宿泊するホテル前のバールで軽く打ち上げをしているところだ。割と人数もいるから、店の奥の大人数が入る部屋を貸切にしてもらっている。
今までライティングについて熱く語っていた照明スタッフ達との話が一段落して、彼らは席を離れていった。
開始から2時間ぐらい経ったかもしれない。目の前に置いておいたはずの携帯が消えていた。どこかに忘れてきたのかもしれない。探すのも面倒だし、部屋に時計も付いてない。オレは時間を確認するのを諦めて、忘れることにした。
(そういやあんまり食べてないな……)
適当につまもうと思って、テーブルに手を伸ばそうとすると、バターの美味しそうな匂いが鼻をかすめた。
「お前これ好きだろう」
「ん? 篠?」
「あんまり食べてないんじゃないかと思って注文しておいたんだ」
篠の持ってきた皿を見上げると、そこにはこんがりと焼かれたエスカルゴが山盛りで乗っている。
「さすが~。ちょうど何か食べようと思ってたんだよね~」
篠の座るスペースを確保しながら、エスカルゴの乗った皿を受け取る。
「飲み物はいいか?」
「ああ、えっと……」
俺がもうちょっとで飲みきると答える前に、早速店員を呼んでいる。
「次は何を飲むんだ?」
「じゃあ……シェリートニック」
オレは篠が店員に注文しているのを見ながら、エスカルゴを口に入れた。
(美味い……)
もぐもぐと咀嚼してニンニクの香りとバターが絶妙にマッチした味を楽しむ。
すると前から、飲んでるはずなのに表情一つ変えずにうっすら笑みを浮かべる時明がグラスを片手にやってきて、向かいの席に腰を下ろす。
「やっぱりそれ頼んだんだ。食べてるんじゃないかと思ったよ」
「ん~美味いよ?」
「顔を見ればわかるよ。俺もひとつもらってもいい?」
皿を差し出すと、形のいいエスカルゴを1つ取っていく。
「おお、時明も来たのか。足りなかったらまた注文するからな」
「うん、ありがとう。俺は少しで大丈夫だよ」
「そうか。遠慮しなくていいからな」
篠が隣に座りながら、時明の腹具合を探っている。
そんな篠をよそに、エスカルゴを食べ終わった時明は改まった様子で、顔を向けた。
「改めてお疲れ様。今日で地方公演はおしまいだけど、ファイナルが残ってるからね。あと少し頑張らないとね」
「あっと言う間だったな」
「って毎回同じフレーズ話してる気がするんだけど~」
「恒例行事ってことでいいんじゃないかな。そうやってずっとやって来たじゃない」
「うん、まぁそうだけどね~」
淡々と話し始めると、時明の隣で影がむくりと起き上がった。
「…………ん……」
ぼーっとした目はまだ焦点が定まっていないようで、いつにも増して不機嫌そうに眉をひそめている。
「優起きたの?」
「……まだ追加公演もあるだろ」
オレの質問には答えずに、ぼそっと話す優はそう言うとぷいっと横を向いた。
「ふふっ、聞いてたの?」
「お前達の声で起きた」
「それはすまなかったな! 寝ていて大丈夫だぞ。それとももうホテルに行くか?」
「……別に」
そっぽを向いたまま答える優は、ホテルに向かう気はないみたいだ。
「あ~追加公演ね~。その前に次の新曲の事もやらなきゃだよな~」
「そうだね。やらなきゃならないことはたくさんあるね」
グラスに入ったラムを飲みきると、ちょうど追加で頼んだドリンクがやってくる。
それから適当に返事をしながら、シェリートニックを一口飲む。
(10年か……)
これから先の10年も20年も、このメンバーが演奏するステージでオレは歌い続けることができるんだろうか。
「ま、今は細かいことはいいよね~! 今日はもっと飲むぞ~」
「ん? 突然どうした?」
「ふふっ、酔っ払っちゃってるんだよ、きっと」
「……呆れた」
「ほら、みんなもいつものやつやるぞ~」
オレは手に持ったグラスを一気に飲み干して空にすると、追加で4人分のテキーラを注文した。



※初出情報 SweetPrincess vol.18(株式会社ヘッドルーム)



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今週もDYNAMIC CHORDの情報をお届けしました!

先週のブログでお知らせした通り、5月から新井が担当してきましたブログの連続更新は本日で一区切りとなります。
更新を楽しみにしているというお声をいただくこともあり、その度にご覧いただいている皆さまへの感謝が尽きません。

ミニアルバムとPS Vita版を発売したapple-polisher、そしてDYNAMIC CHORDの魅力を、このブログを通して皆さんにお伝えできていたら嬉しいです(=゚v゚)
楽曲やドキュメンタリーの感想は、ぜひお手紙やメッセージで彼らに伝えてあげてくださいね。

ブログは不定期に戻りますが、peridot summer”“topaz fall”DYNAMIC CHORD JAM&JOIN!!!!と、これからもDYNAMIC CHORDの情報をお届けしていきますのでお楽しみに

また、7月21日(土)にはアニメ『DYNAMIC CHORD』「PREMIUM FAN MEETING 2018」が開催されます!
当日の情報も近日公開されるとのことですので、今しばらくお待ちください。
暑さ対策をしっかりして、イベントを楽しんでくださいね。


それでは、またお会いしましょう

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